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佐藤 治夫
JNC TN8400 99-065, 379 Pages, 1999/10
第2次取りまとめにおいて、岩石マトリックス中の実効拡散係数設定のための拡散係数のデータベース(以下DBと略称)を整備した。本DBでは、実効拡散係数(De)、見掛けの拡散係数(Da)、自由水中の拡散係数(Do)の3種類の拡散係数を取り扱った。また、19801998年に公表された文献を対象として以下の点に留意して整備した。(1)第2次取りまとめは、我が国の地質環境を対象としていることから、国内の岩石を対象として整備する。(2)地層処分の性能評価では22元素を重要元素としているが、汎用性を考慮して全ての元素または水溶性トレーサを対象とする。(3)対象岩石の内、堆積岩に含まれる石灰岩については、天然資源となり得ることから、DB整備の対象から除くものとする。物質移行および地質学的観点から、岩種を結晶質岩(酸性)、結晶質岩(塩基性)、堆積岩(砂質岩類)、堆積岩(泥質・凝灰質岩類)の4種類に分類した。また、結晶質岩の内、中性付近の岩石については塩基性岩とした。DBは、各岩種単位で構成される。各岩種毎のDBはさらに各元素単位で整理し、各元素毎に化学種、岩石名、拡散係数(De,Da,Do)、取得条件(方法、間隙水、pH,Eh,温度、雰囲気など)、文献など24項目の情報を入力した。調査の結果、結晶質岩(酸性)に対するDeは、全部で18元素及びトレーサ(炭化水素)、207件のデータが報告されており、その全てが花崗岩、花崗閃緑岩、黒雲母花崗岩などの花崗岩類であった。結晶質岩(塩基性)に対しては、玄武岩、安山岩、片岩について、6元素、32件のDeデータが報告されていた。堆積岩(泥質・凝灰質岩類)に対しては、泥岩、泥質片岩、凝灰岩について、8元素、54件のDeデータが、また、堆積岩(砂質岩類)に対しては、珪質堆積岩について、1元素、11件のDeデータが報告されていた。これからも分かるように、データは花崗岩類に偏る傾向が見られた。一方、砂質岩類に対するデータが少ないことも分かった。各岩種ともDeは概ね間隙率と相関性が見られるものの、Daについては余り相関性が見られなかった。他に、形状因子や幾何学因子と間隙率との関係、Deとイオン電荷、Do、元素との関係など、様々なパラメータ間の関係についても議論した。
佐藤 治夫
JNC TN8400 99-062, 16 Pages, 1999/10
圧縮ベントナイト中でのイオン電荷の影響を定量的に評価するため、Ni, Am, Sm and SeOの実効拡散係数(De)を拡散化学種の電荷をパラメータとして取得した。Ni,Smに対しては、乾燥密度1.8 Mgm,pH56の模擬間隙水条件にて透過拡散法により測定した。SeOに対しては、乾燥密度l.8 Mgm,pH11の模擬間隙水条件にて測定した。Amに対しては、陽イオン排除の効果を確認する目的で、乾燥密度0.8,1.4,1.8 Mgm,pH2の間隙水条件で測定した。測定では、Na型ベントナイト(クニゲルV1)を用いた。Amの測定においては、低pH領域で行うため、予め層間イオンのNaをHと置換したH型クニゲルV1を用いた。得られたDeは、SmNiAm SeOの順で小さくなった。得られたDeをこれまでに報告されているデータと比較した結果、Deは、CsSmHTONi陰イオン(I, Cl, CO, SeO TcO, NpOCO, UO(CO))の順で小さくなり、陽イオンHTO陰イオンの傾向を示した。AmのDeのみは陰イオンと同程度であった。NiのDeがHTOより小さかった原因は、Niの自由水中の拡散係数(Do)がHTOのそれの約1/3と遅いことによると考えられる。また、AmのDeが陰イオンと同程度であった原因は、AmのDoもHTOの約1/3であったこと、及び陽イオン排除によるベントナイト表面からの静電的反発によると考えられる。そこで、各イオンのDoで規格化して求めた形状因子(FF)で比較した結果、SmCsNiHTOAm陰イオンの順で小さくなり、Cs,Ni,Smに対しては表面拡散、Amに対しては陽イオン排除、SeOを含む陰イオンに対しては陰イオン排除の可能性が示された。FFの計算結果から、乾燥密度1.8 Mgmに対する表面拡散の程度は、HTOを基準としてSmに対しては5倍程度、Csに対しては3倍程度、Niに対しては1.3倍程度であった。また、同条件における陰イオン排除の程度は、TcO4で1/7程度、NpOCOで1/6程度、SeOで1/5程度と見積もられた。
佐藤 治夫; 澁谷 朝紀; 舘 幸男; 太田 久仁雄*; 天野 健治*; 油井 三和
PNC TN8410 97-127, 57 Pages, 1997/08
高レベル放射性廃棄物地層処分の性能評価研究において,核種の移行遅延特性を定量的に調べモデル化することは重要な課題の1つとして挙げられている。筆者らは,結晶質岩中における核種の遅延の程度を定量化するため,割れ目から岩石マトリックス方向への核種の拡散,岩石への核種の収着および間隙特性の変化について調べている。本研究では,釜石原位置試験場の花崗閃緑岩割れ目周辺に見られる割れ目充填鉱物部および変質部の内,地下水が接触している割れ目を対象に核種の移行遅延特性を調べた。イオン電荷をパラメーターにNa,Cs,HTO,Cl,Seについて2225の範囲で見掛けの拡散係数および実効拡散係数を取得した。透過拡散法により,割れ目充填鉱物部,変質部,花崗閃緑岩に対して取得すると共に,Cs,Sr,Se,238Uおよび239Puのバッチ法による収着実験を同岩石について行い,分配係数を取得した。酸化還元条件に鋭敏な元素の内,SeについてのみN2雰囲気のグローブボックス(O21ppm)内で行い,他の元素は大気雰囲気で行った。岩石試料と同じ場所から採取した地下水(pH8.79.5)を実験では用いた。岩石試料の間隙率および密度を水中飽和法および水銀圧入法により,また,細孔径分布や比表面積を水銀圧入法により測定した。間隙率は,割れ目充填鉱物部(5.6%)変質部(3.2%)花崗閃緑岩(2.3%)の順で小さくなり,割れ目からマトリックス方向に対して小さくなることが分かった。花崗閃緑岩および変質部の細孔径分布は10nm0.2mmの範囲にわたっており,割れ目充填鉱物部は50nm0.2mmの範囲であった。しかしながら,割れ目充填鉱物部における多くの細孔径は100nmと0.2mm付近で見られた。全てのイオン(Na+,Cs+,HTO,Cl-,SeO32-)の実効拡散係数は間隙率に依存し,割れ目充填鉱物部変質部花崗閃緑岩の順に小さくなった。細孔径分布の測定結果から間隙径がイオン径に比べて大きく,岩石表面とイオンとの静電的相互作用の効果はそれほど大きくないものと考えられることから,岩石マトリックス中のイオンの実効拡散係数を間隙率や屈曲度などの間隙構造因子および自由水中のイオンの拡散係数を用いて予測した。その結果,予測値は実測値とほぼ一致し,形状因子に基づいたモデルの適用性が確認された。また,岩石に対
田中 隆一; 水橋 清; 須永 博美; 田村 直幸
Nuclear Instruments and Methods, 174(1-2), p.201 - 208, 1980/00
電子加速器から取出される幅広いビーム中の電子流密度分布の簡便で正確な測定法として、空気にされされたグラファイトターゲットに吸収された電荷を検出する方法を研究した。本報はいくつかの基本的な問題を解決する手段を中心に述べた。吸収体の実効入射面積は吸収体の幾何学的な配置を工夫することにより厳密に決定可能となった。 吸収体からの後方散乱による電荷損失は斜め入射を考慮した後方散乱係数を用いて補正可能となった。空気中に生成したイオン電荷の流入の影響が認められたが、それは主として吸収体とガードとの間の接触電位差に起因することが明らかになり、その補正法を提案した。これらをもとにして2%の正確度で電子流密度の測定が可能となった。